#28 多用途という「余白」

 

HOUGAの服づくりにおいて、「多用途」であることは重要な要素のひとつです。
それは、ひとつの服が複数の用途に応えるという機能性だけではなく、曖昧さを肯定することでもあります。
私は何かを明確に定義づけられることに息苦しさを感じます。
だからこそ、「これも正解」「それも間違いではない」といった曖昧さに、むしろ美しさや豊かさを感じるのです。


小さなマネキンと大人のマネキンに交互に同じ服を着せながら服の試作をしたこともありました。

その過程で見えてきたのは、年齢やサイズの枠に縛られず、それぞれの身体に自然に馴染んでいく服のかたちです。
 そこには、着方や意味づけを一方的に決めつけない余白が存在していました。

たとえば、HOUGAの服は─
ドレスにもなり、スカートにもなる。
前後どちらでも着られる。日常にも特別な場面にも馴染む。
丈を変えることができる。パーツを外したり重ねたりできる。

異なる体型・身長の人が、それぞれに心地よく着こなせるよう設計された服。


そうした設計には、「こうでなければならない」という制約がありません。

それは、着る人に委ねられた余白であり、自分らしさを探るための余地でもあります。
「他の可能性がある」という事実は、日々を生きる私たちに、小さくとも確かな自由を与えてくれる気がします。
初期設定を探ることがデザインにつながっていきます。


たくさん着て、愛着が増していくこと。

思いがけない着方や組み合わせに出会うこと。
そして、装うことによって、自分でも気づかなかった自分の一面に気づくこと。

HOUGAの服が、そんな「可能性の芽」を育てる存在となれたらと願っています。