#26 服をつくる理由
STORYを書き始めてから1年が経ち、原点をあらためて振り返ってみました。
服づくりを始めた頃、なぜ自分が服をつくりたいのか、はっきりとは分かっていませんでした。
自分が服をつくる意味を、うまく言葉にすることができなかったのです。
それでも、理由は分からなくても、「つくりたい」という気持ちだけは、確かに心の奥にありました。
今でも、その理由を完全に理解できているわけではないのかもしれません。
けれど、服をつくり、それを見てもらい、着てもらう。
そんな経験を重ねていくなかで、少しずつ見えてきたものがあります。
それは、私たちを無意識のうちに縛っている何かから解き放たれて、
もっと自由に、もっと軽やかに、“自分らしさ”の扉を開くきっかけをつくりたいという想いです。
もちろん、なにも考えずに、ただ純粋にファッションを楽しんでもらえたら、それだけでも嬉しい。
でも私は、服にはそれ以上の力があると信じてきました。
新たな服と出会うとき、新しい言語を手に入れるような感覚が広がります。
はみ出していても、人と違っていても、うまく噛み合わない日があってもいい。
そんな日にも、「自分が自分でいていいんだ」と、「こんな自分も自分だった」と、思い出せるような服。
この服を着ていると、自分を少し好きになれる気がする。
足取りが軽くなる。表情がちょっと明るくなる。
そんな小さなことの積み重ねが、未来を変える大きな力になればいいなと、心から願っています。